サンゴ カルロは珊瑚彫刻の一家に生まれた幼少期の多くを父の工房で過ごしたが、父や兄弟たちのような手工芸品の多くの職人たちのように市場の要求にしたがう製作姿勢に対して反抗的であったという。トーレ・デル・グレコ芸術学校では、きわめて優秀な生徒であり、カメオ彫刻の技術は群を抜いていたが、ここで古代から伝わる珊瑚芸術と出会いナポリ芸術学院に進む。
しかし、組織的な学習システムに迎合することなくカルロの横溢する個性は独自の切り拓くことをおのずと求め始め、神話や精神世界に心奪われながら、その情熱を珊瑚や貴重な宝石に傾ける。さらに現代作家の作品や思想にも触発されていき王道のその先にある革新への道を歩み出し、いつしか鬼才として芸術家の高みにたどりついていたカルロ・パルラーティ。カルロ自身の若き日に思いをはせたのか、本作品は未来を見つめ理想に向かって決然と挑もうとする青年の力強さが緊張感を伝えてくれる。手前の横顔は神話の青年アポロンの英知と情熱を彷彿とさせているともうかがえ、カルロの青年期の自負がのぞく。
土佐のモモサンゴの中でも血赤に近い色調ならではの存在感から作品の主題に賭けるカルロの意気込みが伝わってくる。
「若者の横顔」1980年作:左
(65mm/45.5g)サンゴ・K18
 
「若者の賛美」1992年作:右
(63mm/66.8g)サンゴ
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