致命傷の勇士・苦悩 見る者を圧倒する激しさが物語るもの、それはカルロの内なる憤怒なのか、あるいは世界に渦巻く対立のもたらす負のエネルギーなのか、それとも人間に与えられた性ともいえる闇にうごめく悪業なのか?
地獄の業火に焼かれる罪深き人間のまさに断末魔の叫びにも似た形相に、カルロの真骨頂ともいうべき透徹した創造意欲がむしろ逆説的に発現されている。
珊瑚の持つ質感をみごとなまでに生かし、「苦悩」を与え、まとわりつく悪魔が、まさに生身のおどろおどろしい生き物のごとく息づいており、硬質のマテリアルがさながら熱をもちまさに火焔がゆらめいているかのようにさえ見える。
一方、同じ珊瑚でありながら苦悩の表情をむき出しにする表情は血の気を失い硬直する肌を連想させ、ここに天才カルロの才気が凝縮した、ともうかがえる。
台座に使われた漆黒の黒檀と複雑な色あいの照りを帯びた怜悧な美しさをたたえるクオーツとの組み合わせは圧巻である。
「致命傷の勇士」1981年作:上
サンゴ・K18・カルサイト(方解石)
 
「苦悩」1991年作:下
(275g)サンゴ・水晶・黒檀
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